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昭和の名建築保存か解体か耐震費用高額で悩む自治体 - 読売新聞オンライン

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 著名な建築家によって高度成長期に建設され、各地のシンボルとなった建物が岐路に立たされている。コンクリートの耐用年数は50年とされる中、大型で特徴的な構造から、耐震工事には多額の費用がかかることがネックになっている。住民らが「地域の財産」として保存を求めることが多く、専門家は「住民と丁寧に対話し、判断していくことが求められる」とする。(山本貴大)

 世界的建築家、丹下健三(1913~2005年)の設計で、屋根の両端が高くカーブを描いたデザインから「船の体育館」の愛称で知られる旧香川県立体育館(高松市)。県教育委員会は2月、「苦渋の選択だが、役割を終えた」と建物の解体方針を表明した。

 1964年の建築で、鉄筋コンクリート造り。50~60年代に流行したモダニズム建築の代表作の一つで、丹下が同年の東京五輪のために設計した代表作・国立代々木競技場(東京都渋谷区)と同時期につくられ「兄弟作」と呼ばれる。

 2012年の耐震調査で、天井板が落下する危険性が判明。13~14年の耐震化の入札では、ケーブルで屋根をつる特殊な構造から工事が難しく、初回は5億8000万円だった予定価格も3回目には8億1000万円に引き上げたが、全て不調に終わり、14年に閉館した。

 しかし、高いデザイン性から、保存を求める声は多い。5000人超の署名を集めた「船の体育館 再生の会」の河西範幸代表(44)は「価値ある建築物を残していくのが行政の役目」と訴えている。

 県教委の最新の試算では、資材価格の高騰で耐震工事費は約18億円に跳ね上がった。県側は、民間事業者を含めて体育館の活用案を募ったものの、「持続的に運営できる案がなかった。利用法がないのに、多額の工事費用を投じるのは現実的でない」とする。

 高度成長期は、気鋭の建築家が公共建築物を手がける例が目立った。

 文化庁によると、国の登録有形文化財は築後50年以上の歴史的建造物が対象になる。文化財に指定されれば、保存が求められ、修復の際などに補助金が出る。

 一方、未指定のものにはルールはなく、自治体は財政状況などを考慮して存廃を独自に判断するため、貴重な建築物が解体されることにもなりかねない。

 できるだけ外観を変えずに存続させた例はある。

 1970年大阪万博の鉄鋼館などを手がけた近代建築の巨匠、前川国男(1905~86年)が設計し、60年に建てられた京都会館(現ロームシアター京都)は、約110億円を投じて2016年に新装した。

 元々は約2000人収容のメインホールを備えた地上4階、地下1階の鉄筋コンクリート造り。老朽化などを理由に13年から改修を始め、オペラなどに不向きとされたメインホールの高さ、奥行きを拡張した。

 建物を所有する京都市の担当者は「建築物としての評価が高く、地域景観を構成する重要な要素と判断した」と説明している。

 活用法を変え、保存につなげたケースもある。

 佐賀県は、リコーの創業者で、地元出身の市村清氏から寄贈された佐賀市の市村記念体育館について、文化施設への改修を進めている。1963年の建築で、東京・新宿駅西口広場などを設計した坂倉準三(1901~69年)による王冠を思わせるデザインが特徴だ。

 県は2017年に耐震性が不十分として、スポーツの利用を禁止。市内には別の体育館があるため、21年に文化施設への転換を決めた。費用は約52億円。国の交付金などを活用した。

  田中正史・武蔵野大准教授(建築構造論)の話 「芸術的価値のある建築物には、建てられた時代の歴史を映し出し、ランドマークとして街の文化や風景を形作ってきた側面もある。一度壊せば、全く同じ物は二度と作れないため、所有者だけで保存か解体かを安易に判断せず、住民の声を聴く仕組みを作った上で、結論を出すことが望ましい」

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June 16, 2023 at 03:00PM
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