Search

田根剛氏が生む建築の原動力 コンセプトの組み立て方 - 日経クロストレンド

japanes.prelol.com

建築家の田根剛さんが、2023年6月、ドイツの「ヴィトラ キャンパス」内に「Tane Garden House」を作り上げた。かやぶきの屋根と壁を備えた小ぶりの外観が何ともチャーミング――。どういう意図からこれを作ったのか。パリのアトリエを訪れて話を聞いた。

建築家の田根剛氏が、ドイツの「ヴィトラ キャンパス」内に作った「Tane Garden House」

建築家の田根剛氏が、ドイツの「ヴィトラ キャンパス」内に作った「Tane Garden House」

 田根さんは、エストニア国立博物館など、世界各地のプロジェクトに携わっている建築家。現在、手がけている仕事のひとつは、東京・日比谷にある帝国ホテルの建て替えプロジェクトだ。約12年の歳月をかけ、次世代の帝国ホテルを生み出す大仕事を担っている。

田根剛氏

田根 剛(たね つよし)氏
建築家

1979年東京生まれ。ATTA - Atelier Tsuyoshi Tane Architectsを設立、フランス・パリを拠点に活動。場所の記憶から建築を作る「Archaeology of the Future」をコンセプトに、現在欧州と日本を中心に世界各地で多数のプロジェクトが進行中。主な作品に『エストニア国立博物館』(2016)、『弘前れんが倉庫美術館』(2020)、『アルサーニ・コレクション財団・美術館』(2021)、『帝国ホテル 東京・新本館』(2036年完成予定)など多数。主な受賞に、フランス芸術文化勲章シュヴァリエ、フランス国外建築賞グランプリ、フランス建築アカデミー新人賞、エストニア文化基金賞グランプリ、第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞、毎日デザイン賞2021ほか多数。著書に『TSUYOSHI TANE Archaeology of the Future』(TOTO出版)など

 田根さんの仕事は多岐にわたるが、通奏低音のように流れているものがひとつある。それは場の起源に遡り、「記憶」を掘り起こすこと。「記憶は決して過去のものではなく、建築を生み出す原動力になるものです」と田根さんは言う。場が持っている本質的な価値を見いだし、今から未来に向けて、それをどう受け継いでいくか――多面的な考察を重ねた上で、建築というかたちにして世に送り出す。これを「未来の考古学」と名づけて実践してきた。

田根氏が担う、東京・日比谷にある帝国ホテルの建て替えプロジェクトの完成イメージ

田根氏が担う、東京・日比谷にある帝国ホテルの建て替えプロジェクトの完成イメージ

 Tane Garden Houseについても同様の手順を踏んだ。そもそもこのプロジェクトは、どのような経緯で始まったのか――。

 ヴィトラは家具の製造を行っているスイスの企業であり、「ヴィトラ キャンパス」は、ドイツのヴァイル・アム・ラインという町にある。自社工場などを有する広大な敷地内に、ジャン・プルーヴェが設計したガソリンスタンド、フランク・ゲーリーによるデザインミュージアムなど、世界の著名建築家による作品が点在しており、一般にも広く開放しているぜいたくな場だ。日本からは安藤忠雄、SANAA、篠原一男に続き、田根さんが4番目の建築家だ。

 3年ほど前、ヴィトラの名誉会長であるロルフ・フェルバウム氏から「持続可能性を象徴するような『ガーデンハウス』の設計に興味はないか」と相談を持ちかけられたのが、このプロジェクトの始まりだった。同氏から、持続可能性という観点から、自然に回帰していく大きな方向のもとで「ガーデンハウス」を建ててほしいと依頼されたのだ。田根さんは、場の記憶を探り、掘り起こすところから構想を練っていった。「庭を作る=作庭」の起源と、庭に付属する小屋の必然性について、掘り下げて研究していったのだ。

 ヴィトラの本拠地であるスイスの民家を研究したところ、かやぶきが多用されていたこと、ロープ作りが盛んだったことがわかった。とともに、持続可能な素材と技術について、地元のものを中心に何をどう取り上げ、使っていくかについて、リサーチとディスカッションを重ねた。

 そしてかやぶきは、屋根や壁面なども含めた断熱材として、ロープは階段の手すりや取っ手として使うことにした。

 そもそもこの「ガーデンハウス」は、ヴィトラキャンパス内にある「アウドルフ ガーデン」の世話をする庭師が休憩するためと、園芸道具の保管をするために作られたもの。オランダのガーデンデザイナーであるピート・アウドルフが作った庭は、さまざまな多年生の植物をはじめ、低木や牧草地に自生する花々が、絶えず変化しながら四季を彩っている美しい庭園だ。

 そして「ガーデンハウス」プロジェクトを進めていく中で、周囲の風景を眺められる展望台や、ヴィトラの社員が手がける家庭菜園などの用途も追加されていったという。

この記事は会員限定(無料)です。

この記事を無料で回覧・プレゼントする


登録会員限定キャンペーン!
【マーケター応援割】実施中!最大2か月無料

Adblock test (Why?)



"建築" - Google ニュース
November 06, 2023 at 10:00PM
https://ift.tt/xFqkJNR

田根剛氏が生む建築の原動力 コンセプトの組み立て方 - 日経クロストレンド
"建築" - Google ニュース
https://ift.tt/3Jjgser
Mesir News Info
Israel News info
Taiwan News Info
Vietnam News and Info
Japan News and Info Update
https://ift.tt/byuFkTh

Bagikan Berita Ini

0 Response to "田根剛氏が生む建築の原動力 コンセプトの組み立て方 - 日経クロストレンド"

コメントを投稿

Powered by Blogger.