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世界が“日本の建築”から学ぶべき「5つのこと」と、それでも日本の都市が美しくない「5つの理由」 | 英誌が提案 ... - courrier.jp

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Photo: Dukas / Universal Images Group via Getty Images

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Text by Jon Morrison

日本人建築家たちの作品は、世界でも人気を集めている。日本の建築の特徴とはどんなもので、そこから見習うべきことは何か。そして人々を魅了する建築物に溢れながらも、日本の都市があまり美しくないのはなぜなのかを、英国人の筆者が自虐を交えながらユーモラスに語る。


世界で活躍する日本人建築家


日本を縦断中の外国人がよく思うことがいくつかある。着物はどんな場面にも驚くほど適応する。カメラを振りまわし、何千枚もの写真を撮りまくる大量の日本人観光客は、少なくとも1980年代にはお決まりのギャグだった。だが、彼らはただ時代を先取りしていただけであって、その他大勢の我々といえば、iPhoneのおかげでやっとそれに追いついてきているのだ。

当然のことだが、日本はある面において完璧な社会である。人々の正直さの基準の高さたるや、コンビニでは6円のお釣りを受け取り忘れただけで店員が追いかけてきてくれるし、電車はもちろん、バスの到着時刻でさえ定刻通りだ。チップの習慣がないのも、私にとっては最高だった。

だが、東京の第一印象が「ディストピア的未来に紛れ込んでしまった感じ」という人もいるかもしれない。鼻先の丸い列車は郊外を切り裂くように四六時中走り続け、ネオンに照らされた裏通りには怪しげなサービスもあり、波打つ摩天楼と網の目のような道路は、長く伸びる灰色の電話線同様、どうしようもなくややこしい。

とはいえ、私たちがいま話すべきは、メイドカフェでもサッポロビールでもタコ焼きについてでもなく、建築についてである──そして、建築について語るべきことは多いのだ。

近年、日本の建築家たちが建築業界を席巻している。隈研吾はスコットランドにデザインミュージアムのV&Aダンディー、坂茂は米コロラド州にアスペン美術館を建てた。伊東豊雄はロンドンのハイドパークに毎年夏に設置されるサーペンタイン・ギャラリー・パビリオンの一期を担当し、安藤忠雄はパリのブルス・ドゥ・コルメスとベネツィアのプンタ・デラ・ドガーナに新たな命(と大量のセメント)を吹き込んだ。


建築業界最大の賞であるプリツカー賞を受賞したければ、日本人に生まれるしかないのでは、という状況がしばらく続いていたのだ。

しかし、英国に住む我々だって、建築について多少のことは知っている。そこで、建築家チャールズ・レニー・マッキントッシュに桜の木材で縁取られたグラスゴーのティールームを発想させた、率直な文化交換の精神に基づき、日本と英国が互いに学ぶべきことを、それぞれ5つずつ挙げてみよう。

1. 伝統

まあ、これは言うまでもなかったかもしれない。日本人は木が好きだ。いや、本当に好きなのだ。というわけで、隈研吾がデザインした国立競技場にはカラマツとスギでできた天井があり、坂茂の作品の多くは紙と段ボールでできている。

また、日本の職人技には非の打ち所がない。実のところ、それは職人技の域をはるかに超えている。シンプルさ、誠実さ、純粋さはいつだって日本の建築を導く原理原則であり、日本のモダニズム建築にも、それは表れている。常に革新され続けるものこそが伝統だ──これ、禅の公案にどうだろうか?

2. 野心

日本は1964年の東京オリンピック以前に、時速210キロの新幹線網を作り上げていたほどの国だ。我々英国人は、いまだにバーミンガムとロンドンを繋ごうとしているというのに。

日本に不可能はない。たとえば、世界第2位の高さを誇る634メートルの東京スカイツリー、および都内第2位の高さである333メートルの東京タワーは、どちらも高い耐震性を持つよう設計されており、1923年に14万人の死者を出した関東大震災クラスの揺れにも耐えられる。

これを可能にしているのが、重い振り子の揺れによって地震で生じる建物の揺れを相殺する「ダイナミックダンパー(動吸振器)」と、構造物全体をゴム製の基盤にのせる「免振構造」という技術だ。

また、日本には大きな橋も多く、たとえば瀬戸大橋は鉄道道路併用橋としては世界最長だ。一方の我が国では、高速鉄道路線「HS2」計画が、予算の都合によりユーストン駅にもたどり着かぬまま頓挫するかもしれないとのニュースが流れたばかりだ。
3. 実験精神

地震をはじめとする自然災害(木造建築にはとりわけ火事が脅威である)を被ってきた歴史のためか、日本の建築はその生活の大部分と同様、短期的な使用を前提としている。

たとえば、東京の一戸建て住宅の平均使用年数は20~30年とされている。このように考えると、ずいぶんと自由になるし(どんなものだっていつかは壊れるのだ)、日本の、地球上で最も豪勢な建築のいくつかを理解できるかもしれない。

とりわけ、伊東豊雄がデザインしたトッズの格子柄のコンクリートビルや、ヘルツォーク&ド・ムーロンによるプラダ青山店のビルなど、表参道のファッションビル群がそうだ。長期耐久の概念に縛られずに生み出されるものの、なんと素晴らしいことか!


4. 空き地の利用

日本は人口に対する建築家の割合が他のどの国よりも高く、そのほとんどは比較的小さい住宅地を対象に、斬新で革新的な住宅、また多くの場合(空き地であれ再開発地であれ)すでに出来上がった都市の小さな隙間を埋めるような住宅を設計している。

英国のように、貴重な緑地帯をつぶして住宅地をつくるよりは、高級な土地に新たな一戸建てをねじ込むほうが明らかにましな発想だし、これによりまた個性的な建物を建てることができる(良い建築も悪い建築もあるが、総じて小さい)。とはいえ、英国では受けそうもないアイデアではあるが。

5. 驚き

「意表を突く」というのは日本建築の重要ポイントで、ときには変わったやり方で達成される。大仏を屋根に穴の空いたドームで囲み、頭のてっぺんだけが外から見えるようにした安藤忠雄の頭大仏殿の設計などは、この最たるものだろう。

香川の直島にある、同じく安藤が設計した地中美術館も同じアイデアのもとにつくられており、たくさんの中庭と天窓が地下にあるギャラリーを彩っている。重い素材に軽みをもたらす手腕は、安藤の西洋における人気の理由のひとつでもある。

安藤忠雄による「頭大仏」

日本の都市に足りていない「5つの要素」


しかしながら、日本の都市が美しいことはまれだ。もちろん、第二次世界大戦による荒廃ののち、非常に短い期間であまりに多くのものがつくられてきたということはある。だが、我々英国人のほうが上手にできることもあると言っても、罰はあたるまい。

1. 場所のわかりやすさ

最近、グリムショーのデザインで立て直されたロンドンブリッジ駅は、どこがプラットホームでどこが売店でどこがインフォメーションカウンターか、行けばすぐにわかる。

これが日本の建物によく欠けている点であり、東京で表示に従い地下鉄の穴にもぐると、いつも避けがたく存在するショッピングセンターに紛れ込んでしまう。そして、30分以内にそこを抜け出せれば御の字というハメになる。

東京駅と京都駅はいったん中に入ってしまうと、もう見た感じだけではどこにもたどり着けない。京都駅で、あるプラットホームへの道を尋ねたことがあるが、実際には約100メートルしか離れていなかった。気の毒に、JRの設計図は3Dモデル化しなければならないほどだ。

2. 緑地

各都市にひとつかふたつある大規模施設の周囲(非常避難施設として必要)を除けば、日本の都市には緑が本当に欠けている。小さな公園や並木の大通りもあまりなく、ピアッツァや大きなスクウェア(どちらも広場の一種)はまったくない。侍の時代につくられたフォーマルな庭園はたいてい門が閉じられており、入るには料金がいる。

日本にいると、ロンドンのような都市がいかに緑にあふれているか気づかされる。また、保護された緑地帯がないために、都市部に果てがないように見える。京都は大阪とぼんやりつながっているし、東京は気づけば横浜だ。飛行機から見下ろすと、太平洋の沿岸部全体が灰色の絨毯のようである。


3. れんが造り

「コンクリートにうんざりしたとき、人は人生にうんざりしている」と言ったのは誰だったろうか? それにしても、日本はコンクリートだらけだ。合計3万5000キロにおよぶ日本の海岸の50%をテトラポッドが覆っており、荒れ狂う波をクヌート1世のごとく打ち払っている、というのは多少面白いかもしれないが……とはいえ。

テトラポッドに関しては少々問題含みな環境的・経済的要因があるのだが(なんとまあ、最近ではかわいいミニチュアテトラポッドも買えたりする)、砂浜の美しさとはやはり別物だ。

コンクリートばかりの街の景色を眺めていると、赤レンガがちょっと恋しくなったりもする。あるいはコッツウォルズ名物、はちみつ色の石造りの景観なんかも素敵だ。

ロンドン・ウェストミンスターの夜景

ロンドン・ウェストミンスターの夜景 Photo: Nicolas Economou / Getty Images


4. 保存
米軍による空襲によって多くのものが失われてしまった。だが最近まで、古い建造物の保存は、多くの日本人にとってそれほど重要なことでもなかったらしい(寿命25年住宅の項目を参照のこと)。

あの醜悪な京都タワーから京都の中心地を見下ろすと、この古都からどうしてこんなしょうもない都市環境が発生しえたのか不思議である(有名な話だが、京都は大戦中に空爆を免れている。当時の米陸軍長官ヘンリー・スティムソンが、かつて新婚旅行で京都を訪れたことがあり、大戦時には「京都を保存しろ」という命令を下していたためだ)。

英国にも問題はあるが、日本よりはましにやってきた。とはいえ、東京駅の保存状態のすばらしさは、日本の態度が良い方向へ変わってきていることの証明である。内部に入らなければ、の話だが。

5. スペース

英国人も、ものすごく狭い下宿のエピソードならたくさんあるかもしれない。たとえばベッドが浴室にある、とか。狭いのに異様に高いアパートメントの話もある。シャワーに入りながら目玉焼きがつくれる、とか。

とはいえ、総じて我々は、アマゾンの宅配を待つのに部屋をうろうろできる程度の広さがある家には住んでいる。日本政府によれば、2019年の東京におけるアパート・マンションの1室の平均面積は66平米だ(41平米を最低生活可能スペースとしている)。

ロンドンの平均は78平米だが、ロンドンを出ればずっと広くなる。イングランドとウェールズ全域を含めれば、中央値は豪勢にも99平米だ。スペースこそ、最後のフロンティアである。

しかし上記の何にもまして、相互交流の姿勢こそがすばらしい。これこそ、互いに学ぶべきことだろう。


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July 23, 2023 at 04:02AM
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