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内藤廣氏の奥ゆかしき“お土産”を発見、青山通りで見た有名建築と再開発 - ITpro

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まち再発見!とことこ散歩

赤坂地区から青山通りへ、メタモルフォーゼが止まらない街並みを歩く(後編)

全5822文字

 赤坂見附交差点近くの鹿島本社ビル前から、青山通りを東京メトロ外苑前駅付近まで歩を進めていく。この通り沿いには「建築散歩」で定番的な立ち寄りスポットと、注目の再開発プロジェクトの現場とが入れ子のように連なっている。歩きながら眺めると、このルート沿いでも街並みが少しずつ変わっていることを実感できる。今後の建て替えが決まっている有名ランドマークなどもあり、これからの景観的メタモルフォーゼを想像してみるのも面白い。散歩のゴールは外苑前駅の目の前にある「新しい都市型寺院」だ。

赤坂地区から青山通りへ、メタモルフォーゼが止まらない街並みを歩く散歩ルート

 

1:赤坂グリーンクロス
2:コマツ本社ビル
3:野村不動産溜池山王ビル
4:赤坂インターシティAIR
5:東京ワールドゲート赤坂
6:「赤坂二・六丁目地区開発計画」建設現場
7:ナインアワーズ赤坂スリープラボ
8:東急不動産赤坂ビル
9:鹿島本社ビル
10:とらや赤坂店
11:「赤坂七丁目2番地区第一種市街地再開発事業」建設現場
12:カナダ大使館
13:Honda青山ビル
14:ポーラ青山ビルディング
15:梅窓院

※散歩時間の目安:ノンストップでおよそ1時間半(取材時)。1~5は前編、6~9は中編、10~15は後編で紹介

1:赤坂グリーンクロス、2:コマツ本社ビル、3:野村不動産溜池山王ビル、4:赤坂インターシティAIR、5:東京ワールドゲート赤坂、6:「赤坂二・六丁目地区開発計画」建設現場、7:ナインアワーズ赤坂スリープラボ、8:東急不動産赤坂ビル、9:鹿島本社ビル、10:とらや赤坂店、11:「赤坂七丁目2番地区第一種市街地再開発事業」建設現場、12:カナダ大使館、13:Honda青山ビル、14:ポーラ青山ビルディング、15:梅窓院(出所:国土地理院の地図データに日経クロステックがデータを加筆)

1:赤坂グリーンクロス、2:コマツ本社ビル、3:野村不動産溜池山王ビル、4:赤坂インターシティAIR、5:東京ワールドゲート赤坂、6:「赤坂二・六丁目地区開発計画」建設現場、7:ナインアワーズ赤坂スリープラボ、8:東急不動産赤坂ビル、9:鹿島本社ビル、10:とらや赤坂店、11:「赤坂七丁目2番地区第一種市街地再開発事業」建設現場、12:カナダ大使館、13:Honda青山ビル、14:ポーラ青山ビルディング、15:梅窓院(出所:国土地理院の地図データに日経クロステックがデータを加筆)

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 鹿島本社ビル付近から渋谷方向に、青山通りを進行方向左手の歩道に沿って歩いていく。赤坂警察署前交差点で手前の角地に立つのは和菓子の老舗、虎屋の赤坂店(以下、とらや赤坂店)だ。建て替えを経て2018年10月に再オープンしたこの店舗の建物は、建築家の内藤廣氏による設計で知られる。内藤氏は都内や京都市内などで虎屋グループの店舗施設を複数手掛けてきた。

鉄筋コンクリート造で一部鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造の建物は、地下1階・地上4階・塔屋1階建て。設計は内藤廣建築設計事務所、施工は鹿島が担った。旧店舗ビルの地上部は9階建てだったが、現在の建物は発注者の要望で4階建てにしたという。ボリュームをあえて抑えた建物は、ガラスのカーテンウオールや存在感のある大屋根といった外観の特徴と合わせて、ビルが立ち並ぶ街並みに開放的な場を生み出している。(写真:下田 健太郎)

鉄筋コンクリート造で一部鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造の建物は、地下1階・地上4階・塔屋1階建て。設計は内藤廣建築設計事務所、施工は鹿島が担った。旧店舗ビルの地上部は9階建てだったが、現在の建物は発注者の要望で4階建てにしたという。ボリュームをあえて抑えた建物は、ガラスのカーテンウオールや存在感のある大屋根といった外観の特徴と合わせて、ビルが立ち並ぶ街並みに開放的な場を生み出している。(写真:下田 健太郎)

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 とらや赤坂店は、青山通りと斜交する弾正坂とが形成した変形角地の敷地形状を生かす形で、道路側に扇を広げたような平面プランで立つ。道路に面して緩やかな円弧を描く開放的なガラスのカーテンウオールを通して、小幅のヒノキ張りを基調にした内部がよく見える。建物の1階は受け付けカウンターがあるエントランスで、地下にはギャラリー。壁に沿ってカーブを描く木製の内階段を上がると2階に売り場、3階に喫茶施設がある。

 冒頭から余談で恐縮だが、とらや赤坂店では建築ファンの心をくすぐりそうな“お土産”を見つけた。内藤氏自身による店舗建物のスケッチをパッケージにあしらった小形ようかん3本入りセットがそれ。同店限定のセットで、1階にある自動販売機だけで販売しており、税込み1000円だ(いずれも取材時)。

 このセットは店舗のWebサイトでも紹介されているのだが、自販機が少し分かりにくい場所にあり、筆者は店舗スタッフの案内でようやく発見。「なぜここに?」と思ってしまう設置場所は、お店の戦略なのか、建築家の意図なのか、いろいろと妄想が膨らむ。「奥ゆかしさがすてき」と感じて、筆者も1箱購入。交差点対向にあるお稲荷様(豊川稲荷東京別院)の境内でひと休みしつつ、1本取り出しておいしくいただいた。

内藤廣氏直筆のスケッチをパッケージにあしらった小形ようかん3本入りセットは、とらや赤坂店限定の商品。1階に置かれた自動販売機だけで展開している(取材時)。自販機に施されたアズキ柄のデコレーションも、内藤氏がデザインを手掛けたという。(写真:下田 健太郎)

内藤廣氏直筆のスケッチをパッケージにあしらった小形ようかん3本入りセットは、とらや赤坂店限定の商品。1階に置かれた自動販売機だけで展開している(取材時)。自販機に施されたアズキ柄のデコレーションも、内藤氏がデザインを手掛けたという。(写真:下田 健太郎)

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 とらや赤坂店の前から、青山通り沿いの歩道をさらに進んでいく。丹下健三の設計であまりにも有名な草月会館(1977年竣工)の建物と、高橋是清翁記念公園との間の細い道に、左折して入っていこう。100mほど進むと丁字交差点があり、青山通り側の角地に仮囲いが施された区画がある。日鉄興和不動産と野村不動産が地権者と進めている「赤坂七丁目2番地区第一種市街地再開発事業」の現場だ。

高橋是清翁記念公園と草月会館の間の道路に入って100mほど進むと、左手に「赤坂七丁目2番地区第一種市街地再開発事業」の現場がある。写真左端の道路の左手が公園の樹木、道路を挟んで奥に草月会館の建物背面が見える。日鉄興和不動産と野村不動産が地権者と進めている再開発事業で、特定業務代行者は清水建設。(写真:下田 健太郎)

高橋是清翁記念公園と草月会館の間の道路に入って100mほど進むと、左手に「赤坂七丁目2番地区第一種市街地再開発事業」の現場がある。写真左端の道路の左手が公園の樹木、道路を挟んで奥に草月会館の建物背面が見える。日鉄興和不動産と野村不動産が地権者と進めている再開発事業で、特定業務代行者は清水建設。(写真:下田 健太郎)

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 港区のWebサイトによるとこのプロジェクトは約1万2000m2の対象区画に、住戸約640戸を設ける高層棟とオフィスや店舗などが入る中層棟、高橋是清翁記念公園に面して新設する広場・緑地エリアからなる新街区を開発する内容だ。全体の建築面積は約5200m2、延べ面積は約8万7840m2。高層棟は地下1階・地上46階建てで高さ約157mとなる予定で、2024年度に工事着手(既存の中層建築の解体を含む)。28年度の街区完成を目指している。

関連情報 日鉄興和不動産と野村不動産、「赤坂七丁目2番地区第一種市街地再開発事業」に参画

 新街区の開発現場は、青山通りから見て草月会館の背面に当たる。草月会館の建物は地下4階・地上11階・塔屋2階建て。新街区の高層棟は計画上、それより圧倒的に上背がある。高橋是清翁記念公園の豊かな緑との景観的連続性を期待できる広場・緑地エリアを含めて、新街区が完成すれば周辺の眺めも変化するだろう。

樹木がうっそうと茂る高橋是清翁記念公園は、1936年(昭和11年)の二・二六事件で暗殺された高橋の私邸があった場所で、その庭園部を生かしている。邸宅建物は移築されたが、庭池や石畳の配置などから当時の建物配置をある程度想像できる。天気のいい日は、ベンチや大きめの庭石に腰掛けてくつろぐ人も多い。公園の東隣は草月会館、西隣はカナダ大使館。(写真:下田 健太郎)

樹木がうっそうと茂る高橋是清翁記念公園は、1936年(昭和11年)の二・二六事件で暗殺された高橋の私邸があった場所で、その庭園部を生かしている。邸宅建物は移築されたが、庭池や石畳の配置などから当時の建物配置をある程度想像できる。天気のいい日は、ベンチや大きめの庭石に腰掛けてくつろぐ人も多い。公園の東隣は草月会館、西隣はカナダ大使館。(写真:下田 健太郎)

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 新街区の開発現場から青山通りに戻る。高橋是清翁記念公園内をショートカットするのもいい。1936年(昭和11年)の二・二六事件で、当時の大蔵大臣だった高橋はこの場所にあった私邸で暗殺された。邸宅の建物自体は江戸東京たてもの園(東京・小金井市)に移築され、その庭園部が現在の公園として残る。園内ではかつての建物配置もある程度想像でき、遠い歴史がリアルに感じられて少し薄ら寒くなる。

渋谷方向から見たカナダ大使館。青山通り側の外壁が傾斜し、角度によっては南米のピラミッドのように見えるこの建物も、青山通り沿いでなじみ深い有名建築だ。チーフデザイナーとして設計に携わった日系カナダ人のレイモンド・モリヤマ氏は、2023年9月に93歳で亡くなったばかり。写真左端に高橋是清翁記念公園の樹木、その奥に草月会館が見える。(写真:下田 健太郎)

渋谷方向から見たカナダ大使館。青山通り側の外壁が傾斜し、角度によっては南米のピラミッドのように見えるこの建物も、青山通り沿いでなじみ深い有名建築だ。チーフデザイナーとして設計に携わった日系カナダ人のレイモンド・モリヤマ氏は、2023年9月に93歳で亡くなったばかり。写真左端に高橋是清翁記念公園の樹木、その奥に草月会館が見える。(写真:下田 健太郎)

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 公園の西隣にはカナダ大使館がある。この建物も青山通り沿いでなじみ深い有名建築だ。91年竣工で、建物の設計はカナダ人建築家のレイモンド・モリヤマ氏と清水建設、施工を清水建設が担った。完成当時は、低層階に賃貸オフィスを併設したプランや、在日大使館の建て替えとしては初めて信託方式を採用して建設された点などに注目が集まったという。

カナダ大使館を青山通り対向の赤坂御用地側から望む。青山通りを徒歩で渡るには、赤坂見附側の歩道橋まで戻るか、渋谷側の外苑東通りとの交差点の横断歩道まで歩く必要がある。それぞれやや距離があるのだが、こちら側から見た方が建物全体を望見しやすい。(写真:下田 健太郎)

カナダ大使館を青山通り対向の赤坂御用地側から望む。青山通りを徒歩で渡るには、赤坂見附側の歩道橋まで戻るか、渋谷側の外苑東通りとの交差点の横断歩道まで歩く必要がある。それぞれやや距離があるのだが、こちら側から見た方が建物全体を望見しやすい。(写真:下田 健太郎)

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 チーフデザイナーとして設計に携わった日系カナダ人のモリヤマ氏は、母国を中心に主に大型公共施設の設計で知られる。2023年9月に93歳で亡くなったばかりだ。同大使館は動画サイトに、建物内のバーチャルツアー カナダと日本「カナダ大使館のバーチャルツアー」 や、モリヤマ氏の回顧談話 同「レイモンド・モリヤマ氏」 の映像を公開している。事前にチェックしておくと、散歩をより楽しめるだろう。

 草月会館やカナダ大使館はそれほど上背のある建物ではないが、外堀通り沿いなどで見たいくつかの建物(前編・中編を参照)と同様に、やはり足元の歩道からは全体が見えにくい。青山通り対向の赤坂御用地側から見ると、全体が視野に入る。歩道橋や横断歩道があまりない道路区間なのだが、時間と体力に余裕があれば、多少行きつ戻りつしてでも、対向の歩道に渡って眺めてみることもお薦めしたい。

 今回の散歩もいよいよ終盤。カナダ大使館前から青山通りをさらに渋谷方向へ、外苑東通りと交わる青山一丁目交差点を目指して歩いていこう。

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June 28, 2024 at 03:00AM
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