赤坂地区から青山通りへ、メタモルフォーゼが止まらない街並みを歩く(後編)
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赤坂見附交差点近くの鹿島本社ビル前から、青山通りを東京メトロ外苑前駅付近まで歩を進めていく。この通り沿いには「建築散歩」で定番的な立ち寄りスポットと、注目の再開発プロジェクトの現場とが入れ子のように連なっている。歩きながら眺めると、このルート沿いでも街並みが少しずつ変わっていることを実感できる。今後の建て替えが決まっている有名ランドマークなどもあり、これからの景観的メタモルフォーゼを想像してみるのも面白い。散歩のゴールは外苑前駅の目の前にある「新しい都市型寺院」だ。
赤坂地区から青山通りへ、メタモルフォーゼが止まらない街並みを歩く散歩ルート
1:赤坂グリーンクロス
2:コマツ本社ビル
3:野村不動産溜池山王ビル
4:赤坂インターシティAIR
5:東京ワールドゲート赤坂
6:「赤坂二・六丁目地区開発計画」建設現場
7:ナインアワーズ赤坂スリープラボ
8:東急不動産赤坂ビル
9:鹿島本社ビル
10:とらや赤坂店
11:「赤坂七丁目2番地区第一種市街地再開発事業」建設現場
12:カナダ大使館
13:Honda青山ビル
14:ポーラ青山ビルディング
15:梅窓院
※散歩時間の目安:ノンストップでおよそ1時間半(取材時)。1~5は前編、6~9は中編、10~15は後編で紹介
鹿島本社ビル付近から渋谷方向に、青山通りを進行方向左手の歩道に沿って歩いていく。赤坂警察署前交差点で手前の角地に立つのは和菓子の老舗、虎屋の赤坂店(以下、とらや赤坂店)だ。建て替えを経て2018年10月に再オープンしたこの店舗の建物は、建築家の内藤廣氏による設計で知られる。内藤氏は都内や京都市内などで虎屋グループの店舗施設を複数手掛けてきた。
とらや赤坂店は、青山通りと斜交する弾正坂とが形成した変形角地の敷地形状を生かす形で、道路側に扇を広げたような平面プランで立つ。道路に面して緩やかな円弧を描く開放的なガラスのカーテンウオールを通して、小幅のヒノキ張りを基調にした内部がよく見える。建物の1階は受け付けカウンターがあるエントランスで、地下にはギャラリー。壁に沿ってカーブを描く木製の内階段を上がると2階に売り場、3階に喫茶施設がある。
冒頭から余談で恐縮だが、とらや赤坂店では建築ファンの心をくすぐりそうな“お土産”を見つけた。内藤氏自身による店舗建物のスケッチをパッケージにあしらった小形ようかん3本入りセットがそれ。同店限定のセットで、1階にある自動販売機だけで販売しており、税込み1000円だ(いずれも取材時)。
このセットは店舗のWebサイトでも紹介されているのだが、自販機が少し分かりにくい場所にあり、筆者は店舗スタッフの案内でようやく発見。「なぜここに?」と思ってしまう設置場所は、お店の戦略なのか、建築家の意図なのか、いろいろと妄想が膨らむ。「奥ゆかしさがすてき」と感じて、筆者も1箱購入。交差点対向にあるお稲荷様(豊川稲荷東京別院)の境内でひと休みしつつ、1本取り出しておいしくいただいた。
とらや赤坂店の前から、青山通り沿いの歩道をさらに進んでいく。丹下健三の設計であまりにも有名な草月会館(1977年竣工)の建物と、高橋是清翁記念公園との間の細い道に、左折して入っていこう。100mほど進むと丁字交差点があり、青山通り側の角地に仮囲いが施された区画がある。日鉄興和不動産と野村不動産が地権者と進めている「赤坂七丁目2番地区第一種市街地再開発事業」の現場だ。
港区のWebサイトによるとこのプロジェクトは約1万2000m2の対象区画に、住戸約640戸を設ける高層棟とオフィスや店舗などが入る中層棟、高橋是清翁記念公園に面して新設する広場・緑地エリアからなる新街区を開発する内容だ。全体の建築面積は約5200m2、延べ面積は約8万7840m2。高層棟は地下1階・地上46階建てで高さ約157mとなる予定で、2024年度に工事着手(既存の中層建築の解体を含む)。28年度の街区完成を目指している。
関連情報 日鉄興和不動産と野村不動産、「赤坂七丁目2番地区第一種市街地再開発事業」に参画新街区の開発現場は、青山通りから見て草月会館の背面に当たる。草月会館の建物は地下4階・地上11階・塔屋2階建て。新街区の高層棟は計画上、それより圧倒的に上背がある。高橋是清翁記念公園の豊かな緑との景観的連続性を期待できる広場・緑地エリアを含めて、新街区が完成すれば周辺の眺めも変化するだろう。
新街区の開発現場から青山通りに戻る。高橋是清翁記念公園内をショートカットするのもいい。1936年(昭和11年)の二・二六事件で、当時の大蔵大臣だった高橋はこの場所にあった私邸で暗殺された。邸宅の建物自体は江戸東京たてもの園(東京・小金井市)に移築され、その庭園部が現在の公園として残る。園内ではかつての建物配置もある程度想像でき、遠い歴史がリアルに感じられて少し薄ら寒くなる。
公園の西隣にはカナダ大使館がある。この建物も青山通り沿いでなじみ深い有名建築だ。91年竣工で、建物の設計はカナダ人建築家のレイモンド・モリヤマ氏と清水建設、施工を清水建設が担った。完成当時は、低層階に賃貸オフィスを併設したプランや、在日大使館の建て替えとしては初めて信託方式を採用して建設された点などに注目が集まったという。
チーフデザイナーとして設計に携わった日系カナダ人のモリヤマ氏は、母国を中心に主に大型公共施設の設計で知られる。2023年9月に93歳で亡くなったばかりだ。同大使館は動画サイトに、建物内のバーチャルツアー カナダと日本「カナダ大使館のバーチャルツアー」 や、モリヤマ氏の回顧談話 同「レイモンド・モリヤマ氏」 の映像を公開している。事前にチェックしておくと、散歩をより楽しめるだろう。
草月会館やカナダ大使館はそれほど上背のある建物ではないが、外堀通り沿いなどで見たいくつかの建物(前編・中編を参照)と同様に、やはり足元の歩道からは全体が見えにくい。青山通り対向の赤坂御用地側から見ると、全体が視野に入る。歩道橋や横断歩道があまりない道路区間なのだが、時間と体力に余裕があれば、多少行きつ戻りつしてでも、対向の歩道に渡って眺めてみることもお薦めしたい。
今回の散歩もいよいよ終盤。カナダ大使館前から青山通りをさらに渋谷方向へ、外苑東通りと交わる青山一丁目交差点を目指して歩いていこう。
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June 28, 2024 at 03:00AM
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