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【全文公開!】“読む”ラジオ #ナナメの場 ~建築家 五十嵐淳さん ゲストトーク~ - nhk.or.jp

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家族や友だちとはちょっと違うナナメの関係の人たちとゆるーくつながり、 もうひとつの居場所を作ろうという「ラジオ #ナナメの場」。 「ゲストコーナー」では、建築家の五十嵐淳さんにお話を伺いました。その全文をお届けします! 放送日:2022年9月11日
#ナナメの場 ホームページはこちら

【ゲスト】
五十嵐淳さん
建築家。北海道出身。北海道の気候風土や風景との共生と建築の普遍的な価値を問いながら、「人間の原初的な居場所」をテーマに住宅から公共施設まで多岐にわたる建築を手がけ、国内はもとより海外からも注目を集める。

【ラジオ #ナナメの場 MC】
⽔野莉穂(ずーちゃん)
紅茶の喫茶店アグラクロック オーナー。2017年北海学園大学を卒業して半年後、生まれ育った恵庭市で喫茶店をオープン。“自分が好きなじぶんで居られるところ”を大切にした場づくりを通して、輪づくりをしている。今後は、田舎暮らしを通して、季節と暮らしながら遊ぶ場づくりを計画中。

まえだゆりな
北海道函館発のうたうたい。 つまずきながらもまっすぐに生きるうたをうたう。日本や海外の子どもたちとの曲作りワークショップ、演劇やダンスチームとのコラボなど、表現をすることの可能性に挑戦。2018年車で日本一周”my way tour”、2019-2020年度NHKほっとニュース北海道エンディング曲担当。

【進行】
芳川隆一アナウンサー(NHK札幌放送局)

<目次>
 あの著名な建築物も
 「原っぱと遊園地」
 入りやすいお店って
 場所がもたらす効果
 「距離感」
 決めつけない建築

あの著名な建築物も

ずーちゃん:
家族や友達とはちょっと違う、ナナメの関係の人たちがゆるーくつながり、もうひとつの居場所をつくろうという、ラジオ #ナナメの場 。お送りしているのはずーちゃんこと水野莉穂と、

ゆりなさん:
まえだゆりなと、

芳川アナ:
札幌放送局アナウンサーの芳川隆一です。NHK札幌から生放送です。

早速ゲストコーナーへとまいりましょう、すでにスタジオに入っていただいています。きょうのゲストは建築家の五十嵐淳さんです。五十嵐さんよろしくお願いします。


五十嵐さん:
どうもこんにちは。建築家の五十嵐淳です。よろしくお願いします。

芳川アナ:
五十嵐さんは北海道生まれ。北海道を中心にして、住宅から公共施設まで多岐にわたってこれまでも設計されてきました。あの有名なラベンダー畑が広がるファーム富田、ありますよね。看板と回廊(かいろう)スペースを設計したのも五十嵐さんなんです。

ずーちゃん:
お会いできる日が来るとは。

芳川アナ:
番組のホームページに五十嵐さんの顔の写真とともにファーム富田の回廊スペースのところの写真も載っていますので。見ていただくと皆さん「このことね」と分かってもらえるかと思います。

(中富良野町 ファーム富田 回廊)

(北見市常呂町 風の輪)

「原っぱと遊園地」

芳川アナ:
さっそくそんな五十嵐さんの建築家としてのご活動についてお話をうかがっていきたいと思うんですけれども、五十嵐さん、いまお話も出たファーム富田の回廊の部分、そして看板の設計を担当されたということなんですけれども。まずどういうことを意識して、どんなことを大切にして設計をされたんでしょうか。

五十嵐さん:
建築家ってどうしても難しく言うくせがあってですね… 最初にすごく分かりやすい概念みたいなものをお伝えしたいなと思うんですけど。
原野とか原っぱを、いま想像してほしいんですよ、頭の中で。大草原みたいな。

芳川アナ:
みんな眼つぶって。

五十嵐さん:
仮にそこにピクニックに行こうと皆さんしたときに、どこにピクニックマットを広げようか、ってまず考えますね。そこにはまだ誰もいなくて、自分たちもしくは自分がひとりで行くことをイメージしてほしいんですけど、迷うんですよ。どこに敷こうかっていうのが。仮にですね、その大草原に大きな木が1本立っているのを頭の中でイメージしてほしいんですけど、そうするとおそらく、ほぼその木をきっかけとしてピクニックマットを敷くっていう行動を取るんですよね。
これが結構、この人間の本能に非常にうったえかける、大きな居場所の様相になるんですね。

もうひとつ、これは建築の設計の業界で有名な話なんですけれど、「原っぱと遊園地」っていう概念、考え方があるんですけれど。子どもを原っぱに連れていくと、自分で遊びを考える、という思考が働くわけですね。一方で遊園地は、決まった遊び方を提示しているわけだから、その決まった遊び方しかしないっていう、すごく大きな差があって。仮にですよ、森の中とか山の中に入っていったときに木の切り株があったとするでしょう。それはたまたまちょうどいい高さに切られていたり、ちょっと低かったりするんだけど、ある人にとってはそれがイスになったり、ある人にはそれがテーブルになったりするわけですよね。そういう受け取る側がっていうか、居場所を探す側が自由にとらえることができる物の方が、まずは居場所としてはきゅうくつじゃないし、より居心地をふくらませることができる。

ファーム富田の話に行きますけど、そこは大きな原っぱのようなラベンダー畑があるわけですけど、取りつく場所がなかった。例えば海原、大きな海があるとするとやっぱり"より所"がないんですよね。入江って分かりますか? くぼんだ、海から水が流れてきて、海岸線で複雑になって、あれを入江って呼ぶんですけど、入江の奥から海原を見るっていうのは、多分人間にとって非常に安心できる状況。海原にぽつんと小さなボートで浮かんでいると、これは本当に不安でしかない。だからそういう入江のような居場所をラベンダー畑の周りに造りたかったっていうのが発想のアイデアのもとなんですけどね。

芳川アナ:
さっきの原っぱのお話でいうと、原っぱだし、海原だし。それ自体はもちろん眺めてもキレイだしステキだけど、どこに自分が起点を置いて、どう見たらいいのかが確かにイマイチ分かりづらいといえば分かりづらいのか。

ゆりなさん:
安心しして、見られる場所。

ずーちゃん:
なるほど。

五十嵐さん:
それも必ずここに座ってこういう角度で見てください、って言われちゃうと不自由できゅうくつなんですよね。いろんな状況に応じて選択の幅が広がるような、きっかけを作るっていうプロジェクトですね。

ずーちゃん:
用途は決まっているけれど、それ以外の使い方も自由にできるようにっていつも考えていらっしゃるんですか?

五十嵐さん:
住宅なんか考える時にですね、ここにソファーを置いて、ここに机を置いて、ここにテレビを置いてくださいっていう設計はしたくないわけです。想像してみてください、その状況で40年とか50年変わらず生きるっていうのは結構しんどくないですか。

芳川アナ:
確かに。

五十嵐さん:
歳も変われば生活環境とか家族構成も変わったりする中でそういう制約がない空間の方が本当はいいと思っているんですけれど。そこには、住む側の能力というか想像力が必要になってくるんですよね。逆にあまりそういうことを考えたくないって方は、こうやって使ってねって言われる空間の方が住みやすかったりする場合もあるっていう。一概に言えることじゃないですけれども、ぼくは割とどちらかといえば、なるべく自由な想像力を働かせて使ってもらえるようなきっかけを作るぐらいの設計の仕方はしていますね。

芳川アナ:
何かだんだん分かってきましたね。つまり、さっきの話の繰り返しになってしまいますけど、原っぱとか海原とかお花畑が広がっているでしょ。その景色はすばらしいでしょ。じゃあ安心感を覚えながら、どう見たらいいかっていうと。ぱっと放たれると確かに人間不安になる。そのきっかけの部分はくれるんだけど、それ以上のそこで何をしなさいとか、どう見なさいところまでは決めないっていう、観ばいなんじゃない?

入りやすいお店って

ずーちゃん:
確かにそうですね。私もあのお店をもともとやっていたときに…喫茶店をやっていたんですけど、その前がケーキ屋さんだったので全然違う空間をカフェっていうふうに、この空間を見てじゃあどうしようっていうふうに想像したんですけど
じゃあここに何か作ろうって思ったときに、どこからそういう"妄想"は降りてくるというか、何の経験が反映されているのかなっていう。

五十嵐さん:
我々は過去のいろんな建物とか歴史という連関を学ぶので、こういうケースだとこうなるだろうというのは各要望に応じてすぐ浮かぶんですけど、それだとなんて言うか平凡なものができ上がるので、さらにもっと人の何かを誘発するようなきっかけを作るっていうか、そういうことばかり考えるんですけど、

ずーちゃん:
建築が人の動線を作るって面白いですよね。以前釧路に取材に行ったときに、今から場づくりを始めますっていう方たちを取材させてもらったことがあったんですけど、「なかなか店に入って来てもらえないんですよね」って話をそのときにしていて、看板を外に出したらいいですかねなんて話していたんですけど、外から中に入るってすごいちょっとハードルが高いじゃないですか。そういうのって建築でクリアしていくというか、なめらかにしていくってのはあるんですかね。

五十嵐さん:
簡単に言えない部分があるんですけれど…店舗とかだとわざと入りづらくすることによって中がどうなってるんだろうっていう、"妄想"するきっかけにするとかいう作り方もあるし。北海道だと北海道民の気質っていうものがまたそこに関係してくるわけですよね。見えすぎるお店っていうのは北海道ではあんまりはやらないっていう、飲食業界ではそういう説があったり、それであえて路面店でも中があんまり見えないような作り方をするとか、経営する方がどういう意思・ビジョンでお店をやりたいっていうのも当然設計に関係してくるから、いろんな要因がまずはあるってことは理解していただいた上で、でもあくまで考える人間がどう思うだろう、自分も人間だし他者も人間なので、その人間の原初的な部分に応えるような建築作り、アイデアを心がけるようにしていますね。

場所がもたらす効果

芳川アナ:
五十嵐さんが設計をされるときに、一番大事にされていることって、どういうところなんですか。

五十嵐さん:
そうですね、「居心地」って言葉は本当に20代後半のころから設計するときに、非常に重要なキーワードとして常に考えているんですけど、難しいんですよ。例えば「美意識」って、やっぱり国とか年齢とか性別とかで大きく幅が出ちゃうというかね、趣味しこうってそういうものですよね。もう全然どれが正しいわけでも間違っているわけでもなくて、自由でいいんですよ。だけどそう考えると何も設計できなくなっちゃうんで、おおむね人類が喜ぶものっていうのは、そういう美しいとかそういうことじゃなくて、うれしいとか心地よいっていう部分は、あんまり性別とか年齢とか関係なく、共有可能なきっかけになるんじゃないかとは思っていて、そういうことを考えながら設計していますね。

芳川アナ:
ツイッターの投稿が届いていますね。

最近私にとっての居場所は、人の少ない喫茶店です。
誰にも干渉されないけれど孤独感がやわらぐような、落ち着く空間が好きです。なかなか難しい。

なるほど、干渉されないけど孤独感はやわらぐんだ。

ゆりなさん:
分かる。私の良く行く喫茶店もすごく静かで大人数では入れないお店なんですけど、そっとしておいてくれるというか、でも切り離されるわけじゃなくてちゃんと帰りに温かい言葉をかけてくれたりとかするっていうことなのかな、きっと。

芳川アナ:
なるほどね、この、送ってくれた言葉が深いなと思ってね。孤独じゃないんだけど干渉されない。確かに今の私はこういうところを求めているかもしれないなあ。

芳川アナ:
五十嵐さん、ご出身はどちらですか。

五十嵐さん:
北海道の佐呂間町、サロマ湖がある街ですね。

芳川アナ:
今のような建築に対する考え方とは、小さい頃からの環境などから影響を受けたところもあったのでしょうか。

五十嵐さん:
おじいちゃんが大工の棟りょうさんだったので、おじいちゃん子だったもんですからね、非常に。建築家とか設計っていう言葉は当然知らなかったんだけど、建築にはすごく子どもの頃から慣れ親しんでいましたね。

芳川アナ:
人が結局使うし、人が交流する場所だっていうのが、忘れがちだけど大事なところとしてあるのかなと思っていて。ゆりなさん、ライブ、番組冒頭でコロナ今、少し落ち着いたところで久しぶりに対面で活動ができるようになって改めて、その人が集う居場所・場所が、もたらしてくれる効果とか、こういう場所だからこういうふうに盛り上がるんだとか、見に来てくれた人との関係がつくれるんだなとか、感じることってありますか?

ゆりなさん:
結構場所によってお客さんも来る来ないとか選ばれると思うんですね。例えば野外のイベント行きたいなっていうときとか、ちっちゃいカフェのスペースとか、ライブハウスとかに行きたいなっていうときとか、お客さんのそのときの心境、開放的な気分でライブを聞きたいっていうときとか、すごく疲れてるから歌をしみ込ませたいときとかいろいろあると思うんですけど。今その建築の話を聞いていて、そういうライブハウスとかもいろんな人がいるっていう上で場所を選べたりしたらすごくいいのかなって、見る場所を。例えば一番前の席で見たい、端っこの方でしっとり聞きたい、そういうのがあれば変わってくるのかなと。その時にきっと建築家さんが想像力を働かせてくれていたら、普通のライブハウスとは違うものが生まれたりするのかな、なんて考えていました。

五十嵐さん:
例えばヨーロッパだと、オペラとか演劇とかが数百年にわたって歴史があってそれを観劇するという、ちゃんとした遊園地のような構図がしっかりできちゃっている。だからそういう場合はそれに従ってみるっていうことになりますよね。
だからそのプログラムによって歌舞伎とかもそうですよね。相撲とかもそうですよね。升席(ますせき)があってそこに座るとか、フォーマットがしっかりした歴史上のそういうライブみたいなものもあるけれど、現代だとそれはやっぱり音楽の種類とか、それを見に行く人たちのモチベーションとか考え方があるわけで、例えばクラブに行く人たちは混とんとした空間が好きでそれが楽しいわけだったりするし、クラシックはならまた違うだろうしっていう事もあるわけですよね。どうなんですかね、ライブの最大の魅力っていうのは臨場感ですよねきっとね。本人がそこにいて、肉声でそれがダイレクトに聞こえてくることが重要なわけですよね。それをどういう空間でやるべきかっていうことは、あんまり考えたことがなかったんですけど、距離感がやっぱり重要なんじゃないですかね。当然ですけどね。

ゆりなさん:
近すぎても緊張しちゃうし、遠すぎても何か自分に語りかけてくれているように感じない可能性が…。

五十嵐さん:
うん、なるほど。

「距離感」

ずーちゃん:
五十嵐さんにとって、ここ居心地いいなっていう場所はあるんですか、共通するものとか。

五十嵐さん:
ぼくはですね、居心地のいい場所を見つけるのが得意なので。どんな場所にでも必ず居心地のいい場所っていうのはあるはずですね。だから結構どこでも楽しめますね。

ずーちゃん:
何か共通するものはあるんですか。

五十嵐さん:
そうですね、ぼくは人との距離感ですかね。どういうときにどういう居場所を探すかで、探し方も変わるわけですよね。喫茶店でひとりで集中して、それが決してこもった部屋じゃないほうが、想像力が働くこともあるわけですよね。

住宅で結構ワンルームの家を昔作っていたんですけども、ワンルームは間仕切りがない家。だから子ども部屋も夫婦の部屋も、全く間仕切りがないみたいな。
そうすると距離感がすごく大事になるんですね。家族といえどもプライバシーも必要だし、やっぱりなるべく一体で生活できるような、そんな建築を作りたいなってなると、結構物理的な距離感とか、少し床が段差があるだけで子どもの秘密基地みたいなのを作れたりとか、すごく距離感っていうのが重要なのかもしれませんね。

芳川アナ:ツイッターも来ていますね。

Kの世界史さん
五十嵐さんの建築論、聴き入っちゃいますね…。
ゆとりというか、自由さというか、それでいてゆるやかなつながりがある、そんな気がします。

芳川アナ:
私は冒頭にお話があった、海原・原っぱ・そこの木・そこに普通は人が行く。または入江っていうあの例えはすごくしっくりきて、なるほどなと思って。ずーちゃんはまさに古民家リノベーション真っ最中でしょう、何か今取り組んでいて、自分はこういう空間を作りたいんだけど、どうしたらいいかとか、何かあるかな。

ずーちゃん:
私のおうちを作っていたときにちょっとハプニングがあって、天井を抜くことになってしまったんですけど。天井を抜いた瞬間に気持ちもすごく開放的になるし、来てくれる人の交流もすごく前より自動的に進むというか、みんなもちょっと心がリラックスしているなっていう感じがしたんですけど、人が交流をするような仕組み作りというか仕掛け作りみたいなの、何かあるのかなというのと、
反対に、本当に一人一人の居心地の良さを作るための仕掛け作りもあると思うんですけど、何かあったり今まで過去にやったことってありますか。

五十嵐さん:
なるほど、多分ね、建築そのもので交流をうながすっていうのは、ちょっと難しいですよね。プログラムとか、そもそも何のための交流なのかとか、そこがはっきりすると、もしかすると建築の具体的な方法で解決することができるかもしれないけど。もやっと人との交流を促すとなると、それから本来、突然知らない人に話しかけられるのが快適なのか不快適なのかというところが、日本はおおむね不快適ですよね。ヨーロッパなんかに行くと…スイスとかイタリアとかそうですけど、長距離列車に乗るじゃないですか。で、ぼく初めて経験したときは、きっと友だちなんだろうってすごく仲よく話しているんだけど、ある駅で降りていくわけです。一人だけ残ってえっどういう事だったんだろうと。全く知らない人たちなわけです。彼らは必ず会話をするんですよ。だまっていないわけですね。それが日本だと考えられない。大阪だとあるかもしれないけど北海道から関東ではなかなか起こらないわけです。だから単純にこう語れない部分はありますね。

ずーちゃん:
作り手の人がじゃあ居心地のいい場所を作りたいですって言ったときに、それを深ぼっていくのも、建築家さんのお仕事のひとつ、五十嵐さんがされていることなんですか?

五十嵐さん:
プログラムが決まっていれば、ここはカフェで、カフェに来た人どうし、少しでも何か交流が生まれるようなことであればいろいろなアイデアが生まれると思いますね。ちゃんと目的があればね。

ずーちゃん:
確かに。

芳川アナ:
ずーちゃんの古民家リノベーションのようにですね、投稿フォームにいただきました。

コーへーコーヒーさん
好きな人達と飲んだり、工事したり、ラジオしたり、色々なことを創る場所が好きです!

といただきました。

決めつけない建築

芳川アナ:
五十嵐さん、「#ナナメの場」ということで、私たちタテでもヨコでもないつながりを作れる場所をということをコンセプトに話してきましたけど、このナナメの場ということの持つ意味とか、大切さというのを、建築家の五十嵐さんからごらんになって、どんなところにあるとお感じになられますか?

五十嵐さん:
住宅でもそれぞれの家族の考え方とか生き方とか構成が違うわけです。まさにいろんな方といろんな打ち合わせをしながらやっと形が決まっていくわけです。これは住宅じゃない場合もっと複雑になってくるので、多種多様な人たちと本当に長く話をしながら、ある時はかなりかたい話だったり、ある時はすごく夢がふくらむ話だったり、そういうものを統合しながらひとつの建築物をつくっていくというのがわれわれの職能ですかね。

ずーちゃん:
私が前お店やっていたときに、喫茶店なんですけど、靴を脱ぐことをすごく大事にしていて。靴を脱いで入ると、さっき距離感っていう言葉が出ていたんですけど、初対面の人とも交流が多い喫茶店だったので、人と人との距離が近くなる、心の壁がちょっと溶けていくなって感じがしていたんですけど。何かそれってやっぱり日本独特のものかなって、靴を脱いでっていうのは。そういうのって何か建築的な視点では、取り入れたりかあえて仕掛けとかで使ったりとかってあるんですかね。

五十嵐さん:
今作ろうとしている空間・場所っていうのは、まさにそのいろんな人が交流を求めてやって来る場っていう前提があるわけですよね。前提があるとないとでは作り方は変わってきますよね。靴を脱ぐっていう行為を考えるときに、例えば飲食店居酒屋さんとかだと、靴を脱いでもらったほうが滞在時間が伸びるっていう考え方もあるわけですよね。そうすると客単価っていう具体的な話になってきますけど、それが上がってくるとすれば経営にとってプラスになるわけですよね。そうじゃないお店もあって、なるべく循環させたいお店がある場合は靴は脱がせないほうが絶対良いってなるわけですよね。だから住宅の場合は当然靴を脱ぐんですけど、日本の場合ですね。ただぼく作るのは割と玄関らしいものがないようになるべく作るようにしていて、何となくこの辺で靴を脱ぐとか、それも施主さんが考えながら暮らしてもらうみたいな、そんな建築をなるべく作りたいなって思っていて。それは玄関に限らずいろんな場所をなるべくあいまいにしておく、それが何かいいんじゃないかと思っていますね。

芳川アナ:
安心感はちゃんと与えるんだけれども、そこから先の想像する力を絶対そがない。そこを大事にするっていう、建築家五十嵐さんが大事にしている場所作りの極意みたいなのが少し分かってきたような気がいたしました。
五十嵐さんにはこのあとも番組スタジオでおつきあいいただくことになりますので、引き続きよろしくお願いいたします。以上ここまでゲストコーナーでした。

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September 14, 2022 at 04:38PM
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