Search

シリーズ・空き家問題に挑む(1) 建築家自ら「空き家改修→住み継ぎ」を実践する「ヤドカリプロジェクト」 - 新公民連携最前線

japanes.prelol.com

古い空き家を取得し、耐震化などの性能向上を含めた抜本的な改修を行う。そして、自身が一定期間住んだうえで売却し、転売益を次の改修へと投資する──。そんなスキームで古い既存住宅の再生と活用を図るのが、建築家・白坂隆之介氏の「ヤドカリプロジェクト」だ。2021年2月には、第2弾となる建物に自身の事務所を移転した。

 丘の上に昔ながらの家が立ち並ぶ浜松市内の住宅地。細い路地の突き当たりにたたずむ築65年の木造2階建てが、建築家・白坂隆之介氏(リージョン・スタディーズ代表)の新しい拠点「竪穴の家」だ。1956年に建てられた住宅に耐震化などの改修を施し、2021年2月に引っ越した。2階の一室を自身の事務所として利用し、その他の部屋はオフィスや店舗などに賃貸していく。

正面奥が「竪穴の家」。ヤドカリプロジェクト第2弾だ(写真:守山 久子)

[画像のクリックで拡大表示]

竪穴の家2階に設けた白坂氏の事務所スペース(写真:守山 久子)

[画像のクリックで拡大表示]

 「竪穴の家」は、白坂氏が進める「ヤドカリプロジェクト」の第2弾に当たる。空き家を取得してスケルトンリフォームしては、そこに白坂氏が移り住んでいくというプロジェクトだ。第1弾の「がんばり坂の家」は、「竪穴の家」からおよそ500m西のエリアに立地する。こちらは1959年に建てられた平屋を改修し、第2弾の「竪穴の家」に移転するまで白坂氏が事務所兼住宅として利用していた。

 プロジェクトの特徴は、見た目をきれいに手直しするだけのリノベーション物件とは違い、建物の性能を高めて長寿命化を図る点にある。木造住宅の法定耐用年数が22年とされる日本では、20数年で不動産としての価値を失ってしまう場合が多い。「ヤドカリプロジェクトでは劣化対策を施して建物寿命を延ばしつつ、耐震性や断熱性などを高めて建物の価値を元に戻す」(白坂氏)ことがねらいだ。

 改修に際しては新築住宅と同様に確認申請を行い、住宅性能評価書を取得する。建物のつくりや性能に関して第三者のお墨付きを得ることは、中古市場で価値を発揮するための大前提となる。

ヤドカリプロジェクトでは、建物の性能を高め、性能保証を得ることで資産価値の向上を図る。図中の「インスペクション」とは建物状況調査のこと(資料:リージョン・スタディーズ)

[画像のクリックで拡大表示]

 もう一つの特徴は、改修設計を手掛ける白坂氏自身が事業の当事者として関わることだ。不動産の取得や改修などに伴うコストとリスクを負担し、完成後は売却するまでの一定期間、自ら利用する。「設計者が住むことで、建物に対する信頼性を高められる」と白坂氏は考える。3年ほど生活した「がんばり坂の家」では、自宅を開放してジャズライブやヨガ教室などを開催し、地域の交流拠点としても機能させた。

「がんばり坂の家」では講師を招いてヨガ教室を開いてきた(写真:リージョン・スタディーズ)

[画像のクリックで拡大表示]

ライブも開催。浜松市は音楽好きが多く、近隣へのチラシ配布で集客できるという(写真:リージョン・スタディーズ)

[画像のクリックで拡大表示]

ロフト付きのワンルーム空間に改修

 プロジェクトの第1弾と第2弾について、もう少し具体的に見ていこう。

 第1弾の「がんばり坂の家」では、築60年弱の平屋建てを一部増築し、溶融アルミ亜鉛合金めっき鋼板(ガルバリウム鋼板)で覆った現代的な外観に一新させた。延べ面積57m2の室内は間仕切り壁を取り払い、ロフト付きのワンルーム空間に改修した。間取りは全体を帯状に3分割し、玄関を設けた西側から順に、土間、リビング、キッチンや浴室などの水回りをそれぞれ配している。

「がんばり坂の家」北側外観。右側に見えるポリカーボネート製の引き戸が、断熱材を仕込んだ玄関扉になっている(写真:リージョン・スタディーズ)

[画像のクリックで拡大表示]

「がんばり坂の家」の平面図(資料:リージョン・スタディーズ)

[画像のクリックで拡大表示]

 ワンルーム状の空間にしたのは、多様な使い方をしやすくするためだ。建物の規模や周辺エリアの市場調査データを踏まえ、土間部分を事務所とするSOHOや学習塾などの利用を想定した。ただし将来、個室が欲しくなれば土間の一部に床を設けて寝室に変更することも可能だ。

 間取りの変更に加え、性能面の向上にも注力した。

 耐震性を高めるため、既存の布基礎を利用して全面にベタ基礎を施したうえ、外壁や屋根を構造用合板で補強した。敷地の南側にそそり立つ崖斜面への対応も必要だった。敷地の一部が静岡県の「がけ条例(※)」の対象になり、建物を一定距離後退させるなどの措置が求められたからだ。ここでは建物のベタ基礎の一部を立ち上げて防護擁壁としたため、既存の建物をそのまま利用できた。
(※)がけ条例:一定の高さを超える崖の上または下の敷地に建物を建築する際の建築制限で、一般に自治体が建築基準条例の中で制定するもの

 このほか、劣化対策や断熱化も実施した。断熱材は屋根、外壁、ベタ基礎部分にそれぞれ取り付け、新築住宅に対する省エネルギー基準を上回る断熱性能を確保している。これらを基に住宅性能評価を受けて、耐震等級3、劣化対策等級3の評価を得た。いずれも長期優良住宅以上の性能に当たる。

 一方で、初期投資はできるだけ低く抑えた。がけ条例がかかる不利な条件の土地をあえて選んだのも、建物を含めて180万円という安い価格で入手するためだ。「もともとは既存の建物を除却し、限られた範囲で家を建て直すことを想定した土地だった。その点、私たち設計者は土地と建物を一体に考えるので、基礎と擁壁を兼ねて既存の建物を生かすといった工夫も凝らせる」(白坂氏)。工事に際しては、国の長期優良住宅化リフォーム推進事業、浜松市の耐震工事補助金などの補助金を利用した。

Let's block ads! (Why?)



"建築" - Google ニュース
April 13, 2021 at 10:12PM
https://ift.tt/32b1C0r

シリーズ・空き家問題に挑む(1) 建築家自ら「空き家改修→住み継ぎ」を実践する「ヤドカリプロジェクト」 - 新公民連携最前線
"建築" - Google ニュース
https://ift.tt/2ZpUL0T
Mesir News Info
Israel News info
Taiwan News Info
Vietnam News and Info
Japan News and Info Update
https://ift.tt/2xBHb0S

Bagikan Berita Ini

0 Response to "シリーズ・空き家問題に挑む(1) 建築家自ら「空き家改修→住み継ぎ」を実践する「ヤドカリプロジェクト」 - 新公民連携最前線"

コメントを投稿

Powered by Blogger.